年をとると共に1年が早くなる。そうお思いになる人は多いと思います。

もちろん私も、そう思わされている1人です。

「あと何年、生きられるでしょうか」、檀家のお年寄りの口からは、こんな言葉がよく出てきます。「そんなこと、考えるもんじゃありませんよ。今日1日を楽しく生きることを考えればいいんですから」とは答えるものの、私にだって、そういう不安はあります。

 

 今年で満76歳になり、高齢者といわれる年代の私です。まずは、80歳までどう生きようかと人生のプランを立て直しているところです。 

 

 そんな時、同窓会で久しぶりに会った友だちと「お互い年をとったな」と言葉を交わしながら、「お前は、あと何年生きたいと思う」と尋ねたのです。すると友だちからは、「坊さんのくせによく、そんなくだらない質問をするな」という言葉が返ってきました。「坊さんなら、もっと悟ったような顔をしろよ」という後の言葉にムッときて「坊さんだって人の子だい」というと、「そうだよな」といってお互いムフフと笑ってしまった2人。友だちは、「俺は死ぬまで生きていたい」との言葉を吐いたのです。

 

 お酒のせいもあったでしょうが、私は、「それは名言。人間は、なにより素直になることだと仏さまは説いとる」というと、相手は、「キリストも、小児のごとき心を持たずんば、天国に入ること能わじといっているからな」とやり返してきました。

 

 同窓会はいいものです。高校を卒業して60年にもなるというのに、時間が経つほどに、誰もがあの当時の顔に戻って来るのです。たしかに、話の合間に、あいつが死んだとか、こいつは病院に入っているという話題がないわけではありません。しかし、生きている今を味わえる同窓会は、年をとると共に楽しいものになっています。

 

 そういえば、お檀家さんの中に、90歳を過ぎても米寿通信という同窓会の会報をパソコンで打ち続けているお爺さんがいることを思い出しました。「これを出し続けることで、お互いが生きていることを確かめ合っているんですよね」と笑って話すお爺さん。「死ぬまで生きていたい」という言葉を、そのままに噛みしめ直させられる思いがしたのでした。