お釈迦さまの教えの中に、殺生をしてはならないという戒めがあります。しかし、殺すなといっても現実には、私達はいろんな生き物を殺して食べています。お釈迦さまもその事は十分御承知でした。だから、殺す為だけの殺生すなわち無益な殺生はしてはならないとおっしゃるのです。
自然の中に生きている動物にはルールがあります。ライオンは、他のかよわい動物を襲って自分のエサにしますが、自分がお腹いっぱいの時には決して、動物たちを襲いません。だから他の動物たちも、この事をよく知っていて、自分たちの毎日を過ごしています。いわば、これが自然界の中の調和なのです。
ここにこんな話があります。
山奥で修行をしている男に、1匹のシラミが住みついていました。シラミは修行者が坐禅をくむときまって体にくっついて血を吸うのです。思い余った修行者は、ある日、シラミに相談をもちかけました。「シラミ君、どうかお願いだ。私が坐禅をしている時だけはじっと静かにしていてもらいたい。それ以外の時は、私の体の血を吸ってもいっこうにかまわないから。」シラミは、「それは私にとっても願ってもない事です。私もいつあなたにつぶされるかと、毎日びくびくしていました。」それからは、修行者はシラミに悩まされる事なく坐禅に専念する事が出来るようになりました。そんなある日、1匹のノミがシラミの所にやってきて尋ねました。「あなたは丸々と太って見るからに元気そうだが、うまい話でもあったら教えて下さいよ。」シラミは、「私に血を下さっているのはあの修行者です。坐禅の時さえじっとしていれば、あとはいつ血を吸ってもかまわないんです。もちろんつぶされる心配もありません。」「へぇー、なんてうらやましい話だ。私もあなたにあやかりたいものだ。」「いいですよ。そのかわり、私と同じ約束だけはきっと守って下さい。」ノミはさっそく坐禅をしている修行者にとびつき、血をお腹いっぱい吸いました。ところが瞑想を破られた修行者は胸をかきむしり、着ていた服を脱ぎ捨てて、そのまま火にくべて焼いてしまったのです。
約束を破ったノミがどうなったか、皆さんにはもうお分かりでしょう。
