一般的には、お酒の好きな人を辛党、お菓子や饅頭の好きな人を甘党といいます。ところで、お酒の好きな人のことを辛党ではなく、左党と呼ぶ言葉があるのをご存知ですか。

 

 あの甘い砂糖、シュガーではありません。「さ」は左という字、「とう」は、自民党や立憲民主党などで使われる仲間や集団を意味する「党」の字です。いったいどうして、こんな言葉が使われるのでしょうか。

 

 そのルーツは、大工さんの仕事にありました。大工さんは、材木を加工する時、右の手にツチを持ち、左の手にノミを持ちます。この事から、左の手をノミ手というようになりました。それが、いつの間にか、語呂合わせで、お酒の飲み手を表すようになったのです。

 

 ところが、辞書で調べると、この左党という意味には、第一義として左翼政党のことだとあり、その語源は、フランスの議会で議長席から見て、左側の座席に座っている政党を意味することにあったといいます。そこは、フランス革命の当時、革命を急速に進めようとした党派が陣取っていたのです。

 

 このことが発端となり、今日に至るまで社会主義や共産主義を基盤とする政治集団を、左党とか、左翼というようになっているのです。

 

 その反対語となるのは、右を意味する右党とか、右翼という言葉です。それは、フランス革命で保守穏健派が陣取っていたから、その呼び名になったということは、ご理解いただけると思います。

 

 そんな右とか、左とかいう言葉に私が興味を持ったのは、実は、檀家の若いお母さんから、「うちの子は左利きなんです。保育園の先生から、今のうちに右利きになるようにしたらと言われたんですが、どうしたらいいんでしょう」という質問を受けたからです。

 

 確かに今の世の中は、右利きの人にとって便利なようになっています。たとえば、駅の自動改札口でも、カメラのシャッターでも右利きを前提にして設計されています。だけど、この世の中には、人種を問わず人口の1割は左利きの人がいるのだそうです。なぜ、そうなるのかは、今の科学ではまだ、解明されていないのだとか。でも、「左利きを無理に右利きに変えようとすれば、本人にはストレスがたまることも考えられます」と名古屋大学の八田武志先生は語っています。

 

 そう教えられた時、私の頭に浮かんだのは、右手も左手も合わせることによって一緒になる合掌の姿でした。そして金子みすゞさんの詩の中にある「みんな違って、みんないい」という言葉も思い出したのです。