会社の人材育成の研修でよく使われる話だそうです。

 

 ジャングルの中で、お腹を空かして今にも死にそうな2頭のライオンがいました。それをご覧になった神さまが哀れに思って、「1つだけなら、お前たちの願いを叶えてやろう」と声をおかけになりました。すると1頭のライオンは、「最高の子羊の肉をお腹いっぱい食べたいです」といいました。「よし、よし分かった」と答えた神さまは、さっそくこのライオンの目の前に、山のように上等の子羊の肉をプレゼントしました。

 

 そうしてもう1頭のライオンに、「お前は何の肉が望みなのか」とお尋ねになりました。これに対して、「私は、食べ物は何も欲しくはありません」と答えたもう1頭のライオン。驚いた神さまは「おやおや、それではお前は日干しになり、死んでしまうぞ」といいました。するとこのライオンは「叶うことなら1つだけお願いがございます。それは食べ物ではありません。願わくば、私に上手に獲物を捕るチエを与えてはいただけないでしょうか」と答えたのです。

 

 神さまが、このライオンの望みに応じられたかどうかは話には書いてありませんでした。でもこの会社の研修で、なぜよく使われるのかは分かるような気がしました。行き詰まりを見せている今の日本の経済状態。今のままでは、会社は倒産し、人々は路頭に迷ってしまうのではないかという不安でいっぱいです。そんな時だから、みんなは生き延びるチエはないものかと必死に探しているのでしょう。

 

 しかしチエは、与えられるものではありません。自らしぼり出さなければならないものではないでしょうか。与えられることに慣れすぎて、自分自身に備わっている能力に気づかないでいる人が多い気がしてなりません。

 

 法華経の中でお釈迦さまは、こうおっしゃっています。

 

「私は人々が本当に苦しみぬくまで、決して姿をあらわさないことにしよう。安易に救いの手を差しのべれば、彼らは助けを求めるばかりで、自分自身努力しようとする気持ちを失ってしまうだろう。仏の教えは、自分が必死に求めようとする気持ちになってこそ、はじめてその真意が伝わるものだからである」と。

 

 そしてその後に、「求めれば道は必ず開かれる。なぜなら、みんな仏の子だから」とも語りかけておられるのです。

 

 ライオンは神さまにチエを与えて下さるよう願いましたが、仏の子である私たちは、そのチエを仏さまから、とっくに与えられているのだということに気づくべき時ではないでしょうか。