今年77歳になる私が、50歳を過ぎた頃の話です。

 

「あなた、最近、気が短くなったんじゃない」と女房から指摘されました。自分でも、そんな自覚症状がないわけではありません。話し合いをしていても、相手の言葉が気に入らないと、ついついカーッとなってしまうのです。そんな時、女房は、「あなた、お坊さんでしょう。もう少し相手の気持ちを汲みとる余裕は出来ないの」と批判されます。年でしょうか、それとも栄養のバランスを崩しているのでしょうか。

 

 何かの本で、「イライラの原因は、カルシウム不足による」と読んで、出来るだけ牛乳を飲んだり、カルシウムが豊富といわれる魚や野菜をとるようにしていますが、今のところ、目立った効果はありません。

 

 そんな悩みを抱えている私に、檀家のある奥さんが、「お上人さん、それは一種の更年期障害じゃありませんか」といったのです。「更年期障害?」私は思わず、奥さんの言葉を、そのまま口にして問い返しました。それというのは、更年期障害というのは、女性特有のものだと思っていたからです。辞書で調べてみても、更年期というのは、女性の成熟期から老年期へと移行する時期のこと。だいたい47歳頃から始まる卵巣の機能低下によって、ホルモンバランスが崩れる数年間をいうとあります。それによって、女性たちがいろんな体の不調を訴えるのを更年期障害というのだと思っていたのです。

 

 ところが、その奥さんいわく、「近頃の研究では、更年期は、男性にもあるということが分かって来たんですよ。それも、女性よりは10歳遅い、57歳くらいから始まるんだそうです。お上人、ちょうどその年くらいじゃありませんか」といわれ、ドキンとしてしまいました。「そうか、心はともかくとしても、体は自分も更年期に入ったのか」と妙に納得させられたからです。

 

 そういえば、更年とは、更なる年と書きます。生きている以上、年は1年1年重ねていくものです。仏さまの教えの中には、老いること、病気になること、そして死んでいかなければならないことが説かれていますが、私はついつい「老いること」の大変さを忘れていました。

 

 すると奥さんがいったのです。「でも、その更年期を過ぎると、女性も男性も、もう1度元気を取り戻すそうですよ。イライラは、そのうち治りますよ」とアドバイスしてくれました。そういえば、更という字に生きるという字を加えると、甦(よみがえ)ると読みます。

 

「短期は損気」ともいいます。今日1日の元気を、仏さまの知恵から頂かなければと気を取り直している私なのです。