今の世の中、スマホほど便利なものはありません。ここ十数年ほどの間に、スマホは驚くほどの普及を見せました。

 

 昔は、1件の家に1台の電話というのが常識でしたが、今や1人に1台のスマホというような時代になっています。当然の事ながら、私も、この機械を身につけていますが、とっても便利です。あまりにも便利過ぎて、持ち忘れたりすると、1日中不安になってしまったりもするのです。近頃、よく依存症という言葉が使われますが、ひょっとしたら、スマホ依存症になっているかもしれません。

 

 ある日のことです。私は遠くにでかけていて、帰りの新幹線に乗り遅れてしまいました。その日は、帰ってから友達と会う約束をしていたのです。次の列車が来るまでには、1時間ほどあります。

 

「そうだ、遅れることを連絡しておこう」とスマホを手にしました。すると悪い時には、悪い事が重なるものです。途中でスマホの電源が切れてしまったのです。慌てた私は公衆電話を探しました。そして受話器を手にすると、ボタンを押そうとして気がついたのです。なんと、相手の電話番号が分からないではありませんか。

 

 スマホは便利な物で、電話番号を覚えていなくても、登録さえしておけば、簡単に相手を呼び出せるようになっています。持ちはじめの頃は、その便利さに驚いていましたが、いつの間にか、それが当たり前になり、今回みたいな大あわての原因になるのです。

 

 幸いその時には、ホームで売っていた使い捨ての充電器を使ってその場をしのいだのですが、乗り込んだ列車の中で考えさせられました。「今の人間は努力することを忘れてしまった。このままでは、機械に脳みそを吸い取られてしまうかもしれない。人間が生きているってなんだろう」と窓に移りゆく景色を眺めながら、心には様々な思いが浮かびあがりました。

 

「そのうちに、この新幹線だって、無人運転の時代が来るかもしれない。たとえ、運転士がいたとしても、人間が機械以下になるなんて、いやだな」と思ったりもしました。

 

 そんな時、ふと、何かの本で読んだ、こんな言葉を思い出しました。「人間は間違うから、人間なんだ。機械は間違うのではなく壊れるのだ。壊れれば捨てられるだけだが、間違いはやり直しがきく。そして間違いを反省すれば、人間は一歩前進する」という言葉に私は「よし」と元気を取り戻したのでした。