今、「スパダリ」・「ゴン攻め」など、若者の間でしか通じない言葉が流行っているそうです。 

 

ところで、「チンする」ってどういう意味だか分かりますか。

 

 30年位前、ある出版社が、読者に、仲間同士で通じる言葉という特集を組んだところ、この「チンする」という言葉が、アンケートのトップになったそうです。ところで正解は、一体何だったでしょう。それは電子レンジを使ってするお料理のことだそうです。「なるほどな」と思いました。そして同時に私は、「一昔前なら『チンする』はお仏壇のカネを鳴らすことだったのに」と考えたのです。お仏壇のない家庭の多い現代では、人々の頭には「チンする」から、仏さまを想像することは少ないかもしれません。

 

 でも、お檀家さんにいってご回向していると、小さな子供が出てきて、「ぼくもチンする」とよくいいます。そして、見よう見まねでカネを鳴らし、手を合わせてくれるのです。これは、なんともいえない微笑ましい光景です。その幼い菩提心を養う環境がなくなっていくのは、やはり悲しいことだといえるでしょう。

 

 何もかもが便利さという合理化の波の中にのみこまれ、あたたかみを失っていく気がしてならないのです。

 

 いつでしたか、落語家の桂文珍さんが、新作落語をテレビでやっていました。題は「ハイテク仏壇」、時代の最先端をいくハイテクニックの科学とお仏壇が組み合わさったら一体どうなるだろうという話です。

 

 ある家で、この新発売のハイテク仏壇を買いました。カネを鳴らすと、電気仕掛けのお扉がおもむろに開き、中のお灯明がともり、仏さまが明かりに照らされ、浮かびあがって来ます。そして、ほどなく木魚の音と共に、ありがたいお経の声を録音したテープがまわり出すのです。なんともありがたいこのお仏壇、家の人たちは「今の世の中は、お詣りよりもチン一つで全てが叶う」と喜びました。ところがこのお仏壇、思いもかけない弱点があったのです。チンするのは、お仏壇のカネだけではなかったのです。料理をする奥さんが、電子レンジを使う度に、そのチンに反応して、お仏壇の扉が開きはじめ、お経の声が流れ出すのです。お陰で一家はノイローゼ、せっかくの最新技術が災いの種になったという話。

 

 もちろん、これは作り話です。でも、これに似たことがどこかで起こりそうな気がしませんか。手作りを忘れてはなりません。チンに必要なのは、あなたのまごころです。それが仏さまに通じる言葉だと覚えておいて欲しいものです。