今回は、お寺の境内にあります滝のお話をしましょう。皆さんは滝と言われると、うっそうとした山奥にある自然の滝を想像されるでしょうが、お寺の滝は、人工の滝です。境内の井戸から水を引き、高さ5メートルの擁壁を滝らしく改造して、ポンプで水を落とすという、仕組みになっています。おまけに、バルブ調整で水量が変えられ、誰もが参加しやすい滝となっています。

 

 滝を作ろうと思ったきっかけは、龍潜寺を当地に創立された、智玄院日諦上人が、山梨県内船にあります滝山というところで、28歳の時より、10年間の滝修行を行われたことにありました。上人は、内船での7年の滝修行を終えた後、残り3年を、生まれ故郷の、帆柱山の裾野にあります、荒谷の滝で、滝行を続けられ、遂に、明治9年12月8日に、10年間及ぶ、長く苦しい修行を成満されました。その後の日諦上人の活躍は、人々から「生き仏様」・「今日蓮」と呼ばれるような立派なお坊さんとなり、人々に仏の教えを説く、生涯を送られました。

 

 今日、帆柱山の裾野にありました、荒谷の滝は、周りの環境の変化から、水が涸れ、滝行には適さなくなってしまいました。そこで、もっと気軽に滝行が出来ないかと考えていた時に、人工の滝を作ろうと思い立ったのです。

 

 ところで、滝の水で心身を清め、神仏に祈りを捧げると、大きな功徳が頂けると、古来より言われています。特に、日蓮宗の水の行には、大きく2つの功徳があるとされ、1には心身を清浄にし、2には心を養い、仏の教えを守る心の力を強くするといわれています。

 

 そこで、お寺では、4年前より広く一般の方々にも、滝行を体験して頂けるように、滝行の会を開いています。マスコミにも取り上げられ、この4年間で多くの方が参加されるようになりました。参加の理由をお尋ねすると、「会社の人間関係がうまくいかない」・「家族の病気が治るように」・「自分を強くしたい」等々様々です。でも滝行を終えられた後に、感想を尋ねると、一様に、「気持ちがすっきりした」・「小さな事で悩んでいたけど、勇気がもらえた」と前向きな答えがかえってきました。まだまだ、滝行の会も始まったばかりですが、日常とは違う体験をして、人間も自然と共に生きていることを感じられてみてはどうでしょうか。