自然界に咲く花や植物が、私たちの心に、少なからず影響を与えていることは、科学でも証明されています。よく見かける仕事場に置かれる観葉植物も、そこで仕事をする人たちのイライラや不安を緩和し、快適な環境を作るために大きな効果をあげています。


 ところで、境内に春先に植え、水やりを欠かさず育てている蓮が、やっと小さなつぼみを付け始めました。感激です。お寺は、季節とともに様々な花々が咲き誇り、お詣りする方々の目を楽しませています。私も、近頃、花々に目をとめて心和む自分がいることに、気づかされています。年をとったのかな、若いときは、気をとめなかったのに。


 長崎市の、本蓮寺様にお参りしたときのことです。掲示板に「騒ぐ世も、いつものごとく蓮の咲く」 との俳句がはりだされているのに目がとまりました。2年に渡るコロナ禍で 、疲れ切った私たちに、いつもと変わらずに咲き誇る蓮の花は、励ましの力を、観る者に与えているいるような気がします。 蓮(ハス)は、花や葉っぱが特異な形をしている、美しい水生植物です。観る者を、心清らかな気持ちにしてくれることから、仏教では浄土に咲く花とされ、古来から愛されてきました。ちなみに、仏教においては、蓮と睡蓮は区別されず、共に「蓮華」と訳されています。


 そういえば、最大の仏像、奈良 東大寺の大仏様を始め、仏様はみんな蓮の花、すなわち蓮華座に座っておられますよね。


 蓮は、泥のなかにあっても、泥に染まらず、まるで汚れを知らないかのように美しい花を咲かせることから、人間の煩悩に染まらずに、迷いの中から悟りをひらくことが出来るという譬えに使われています。コロナ禍で、ややもするとイライラする心を、ハスの花は静かに咲き、めでる人の心を浄化しているのかもしれません。