以前、総務省が発表した「老人の生活と意識に関する国際比較調査」の結果が興味深い内容でしたので、ご紹介します。

 

 調査の対象は、我が日本国をはじめ、韓国・アメリカ・イギリス・ドイツの国々ですが、60歳以上の男女、各国4千人に対して行われたものです。僅か4千人の回答ですから、私の考えは、そうじゃないと思われる方もあるかもしれませんが、これが世界の平均的な風潮だということで、きいていただきたいと思います。

 

 まず、第1の質問は、「あなたにとって、1番大切なものは、何ですか?」というものでした。これに対しては、各国共通で、「家族と子供」との答えが、80パーセント前後を占めたそうです。まことに微笑ましいことだと思いました。

 

 ところが、その付属的な問いとしてあった、「あなたは、家族や子供を信頼できますか?」ということについては、他の国の老人たちの過半数の答えが「イエス」であったのに対して、日本の人たちの「イエス」という答えは、2割にも及ばなかったそうです。

 

 いやあ、これはショックですよね。他の国の人たちが見栄っ張りなのでしょうか、それとも日本のお年寄りは正直過ぎるのでしょうか。神さまでもなければ、仏さまでもない私には、その真意は分かりません。でも、毎日のようにマスコミを賑わせている、いろんな家庭の悲劇を知れば、「さもありなん」と彼らの気持ちに共鳴したくもなります。

 

 そこで、「では、2番目に大切にしたいものは何ですか?」という問いに目を移すと、なんと日本人の四割近くは「財産だ」と答えているのです。 家族や子供が信頼できないなら、頼みになるのは、お金だという気持ちも分からないではありません。しかし、アメリカのお年寄りの4割近くが、「宗教と信仰」という答えを出しているのには、注目する必要があるのではないでしょうか。

 

 現代文明のトップにあるのは、アメリカです。それなのに、その国のお年寄り達の多くが、信仰を心の支えにしているのは、大きな驚きでした。ひょっとしたら、アメリカに追いつき、追い越せと願っていた私たち日本人に、最も欠けているのは、この信仰心なのではないでしょうか。

 

 ロシアの文豪、トルストイはこんな名言を遺しています。「人間は2度誕生する。1度目は母親による肉体の誕生。2度目は、宗教による魂の誕生。この2度の誕生によって、人間は、本当の人間なる」と。

 

 ぜひとも、あなたに味わってもらいたい言葉なのです。